光あふれる、古き日本家屋の趣き。
大胆なゾーニング変更によって、家族の一体感が高まるような家へと変容。
さらにアンティーク調のデザインが居心地の良い空間を創り出しています。
一番の課題はパブリックスペースの暗さ。
当初のリフォームの主な目的は、長期メンテナンスを含めた建物の寿命延命でした。しかし、実際に拝見するとメンテナンス以上に大きな課題が見えてきました。Y様ご一家は、ご夫婦に3人のお子さま(小学生~中学生)という家族構成。家は2階建てで、1階は13畳ほどのリビングダイニング、キッチン、バス、トイレといったパブリックスペース中心、2階は和室1室と洋間2室という間取りでした。
目についたのは、1階がとても暗いということ。窓はありますが、採光はほぼ無いに等しいあり様でした。それとは対照的に2階はトップライトもあって、よく陽光が入ってとても明るいのが特徴です。実はリフォームの目的の中には、家族の成長というのもありました。
Y様ご一家とお会いしてみると、お子さまたちご兄弟の仲がとてもよいことに気づきました。お打合せ中でも、3人がくっつくようにいたのが印象的でした。
具体的なリフォームのイメージが示されたわけではありませんでしたが、お話をするなかで、家族の一体感を求めていることを感じました。私たちはイメージを鮮明にするために対話をさらに重ねていきました。
Y様は花屋をされており、フラワーアレンジメントの大会では全国7位という経歴を持つ、美意識の高い方です。また、明治、大正期のアンティークが好きということも分かりました。
カウンセリングを通して、2つの方針が見えてきました。1つはパブリックスペースの快適性向上。主に夜しか使わない2階がとても明るく、家族が集まるリビングダイニングが暗いのは合理的ではない。やはり明るい場所にいた方が精神的、健康的にもよいと考えました。
2つ目はY様の嗜好を反映して、昔の日本のアンティークが似合う空間にすることです。ただし、クリアすべき大きなハードルがありました。
- 施主の希望は建物の寿命延命だったが、パブリックスペースの暗さも大きな課題と判断。
- 家族が集まるリビングダイニングの明るさや快適性向上の必要性を強く感じた。
- 内装は施主様の趣味であるアンティーク家具の似合うデザインでコーディネートする。
逆転の発想から生まれたゾーニング変更。
Y様邸は鉄骨造のため、サッシの位置も階段の位置も変更が難しく、間取りを変えずに1Fを明るくするのは困難でした。つまり、既存の位置で最良のプランを考えなくてはいけない。それならばと思いついたのが、パブリックスペースを明るい2階に持っていくという逆転の発想によるゾーニング変更です。
1Fには主寝室と勉強スペースもある子ども部屋を置きます。仲の良いご兄弟なので、一か所に集めたいと図りました。2階にはリビングダイニングの他に、キッチン、バス、トイレも移しました。
内装では、明治、大正のアンティークの似合う空間ということで、蔵戸を付けることをご提案。フィットするもの探すために、4,5軒ほどの古材家を回りました。Y様と一緒に足を運んだこともありました。その中から選んだのが格子の蔵戸です。
この蔵戸を基本に建具のイメージも決めていきました。さらに外装も内装イメージに合わせてデザイン、そのため家全体に昔の日本の家屋を思わせる雰囲気が生まれました。
- 構造上の制限から、パブリックスペースを2階に移すという大胆な変更をプランニング。
- 2Fの内装は古材家を回って見つけた格子の蔵戸を付けて、明治、大正のイメージを演出。
- 外装も内装イメージに合わせることで、家全体にアンティークな雰囲気が生まれた。
近所のランドマークになるような個性的な家に。
約半年のプランニングを経て、施工に入ったわけですが、ゾーニングの変更、それに伴う設備の変更もあって施工期間は約3カ月。そのかいもあって、Y様邸は見違えるほど、素敵なデザインの家に生まれ変わりました。
蔵戸を付けた2Fは、光あふれる空間となりました。居るだけで気持ちの良い雰囲気です。建具の色、格子のピッチも蔵戸に合わせており、統一のとれた美しさが目を惹きます。格子なので階段越しの光もよく入ります。
テーブルや小物など、もともとあった物とも調和がとれて洗練されました。こうした随所にみられる木の質感は、ダウンライトの木目の穴にまでこだわっています。
外装も内装と同じような色あいや造作を施しており、古民家のような趣きは近所のランドマークになるような個性を持っています。窮屈だった玄関付近も入り口も変えて、前に車が横付けできるようになり、スッキリとした収まりのよい感じに仕上がりました。
- 建具は蔵戸の色合いや格子のピッチにあわせて統一感をもたせ美しく仕上げた。
- 外装も内装にあわせて色も外壁も一新、個性的なデザインの家に生まれ変わった。
- 玄関の入り口の方向も変えて、前に車が駐車できるようスペースを効率的に活用。